理事長挨拶

一般社団法人日本看護業務研究会
理事長 大久保清子   

  日本の医療提供体制は、人口構造の変化に対応するために、大きな変革の時を迎えています。病院完結型医療から地域完結型医療への転換へと、つまり地域包括ケアシステムの構築が強力に推し進められています。この改革に伴い、これまで医療機関内で積極的に取り組まれてきたチーム医療は、病院外の多職種も含んだ多様な職種が連携する「地域での多職種同化による展開」と発展していくことが求められています。その中で看護職には、地域の保健・医療・福祉に関わる多職種と連携し協働していく要となる役割が求められ、また期待されています。それは、看護の専門性が全人的に療養者を捉え、医療と生活の両面からアプローチすることを特徴としているからです。
 今後はさらに医療依存度の高い方が、病院から在宅に移行すると考えられ、これまで以上に、多職種が連携し協働していくことが必要になります。したがって看護職は、療養者の全体像を把握し、専門的な臨床判断を基に実践した一連の看護を記録に残すことが重要となります。さらに記録した情報は、対象の療養者に関わる全ての職種が共有できる内容であることが重要です。つまり情報共有には、誰でもが分かりやすい記録が必須なのです。
 本社団では、この課題達成に向けて、多職種が共通認識できるように記録を標準化し、可視化することで、看護職の多忙な業務の効率化と看護の質の向上を図ることを支援する取り組みを進めています。また、それに付随する各種事業を展開しています。

看護業務の改善に向けた4つの事業
1.看護記録ツールマスタ(Health Care books:以降、HCbooks)の提供事業
 多職種が連携し協働していくためには、病院や施設をはじめとして在宅医療や在宅看護、そして医療や介護福祉関係者が、療養者の治療・処置・ケア等の情報を効果的かつ効率的に共有でき相互に活用する仕組みが重要です。
 地域の医療機関の情報共有においては、情報通信技術(Information and communication technology:ICT)の構築が急がれるところです。それに伴いICTで利用できる標準化された看護記録ツールマスターが必要であり強く望まれます。
 HCBooksは、治療や療養する場を問わず、医療や介護を提供する多職種がお互いに理解できる用語を使用しています。また疾患別や病態別、そして病期別や治療別に記録すべき項目を整理して構造化しました。特に、疾患別や病態別に必要な観察項目と介入項目を設定していますので、療養者の疾患や療養の段階に合わせた看護目標に対応できます。また、療養の場に合わせて利用できるような構造になっています。従って職種や療養の場に影響されることなく、治療・処置・ケア等の情報を効果的で効率的に共有することが可能です。



2.看護業務に関するセミナー事業
 看護業務の中でも主に看護記録に関する講座、セミナーを行っています。今年度は、「情報」と「記録」に着目し、効率的かつ効果的な情報の伝達・交換・共有を可能にする記録様式とその活用方法について、特別講演を含め全4回(計7日間)の講座を行います。 既に、前半は終了しておりますが、次回は、平成30年1月20日(土)・21日(日)に東京・天王洲にて開催いたします。テーマは、『看護の質改善のためのデータ活用』です。日本看護協会でDiNQL担当の元理事松月みどり氏、今年度JCI(Joint Commission International)認定を3回目の更新をされたNTT東日本関東病院看護部長の井手尾千代美氏の講演会を企画しています。自施設の2次データ活用等について考える機会になれば幸いです。
 他にも看護記録に関する個別相談や施設内での継続教育の代行なども行っています。

3.調査・研究事業
 看護の質を向上させるために必要な調査研究を行っています。
  ◆看護記録の標準化に関すること
  ◆看護業務改善に関すること
  ◆看護管理に関すること
  ◆看護の質向上に関連すること

4.看護業務支援事業
 看護領域において業務整理や電子カルテ・看護支援システムの導入に関連した支援を行っています。
  ◆Q(標準)看護計画を電子カルテに入れるにはどうしたらいいの?
  ◆Q二次データを利用して業務改善をする方法は、どうしたらいいの?
  ◆Q看護記録に関する院内教育をしたい!効果的な方法が知りたい!
  ◆Q訪問看護ステーションを設立したい!運営はどうしたらいいの?
  ◆Q看護管理に関しての悩みや相談
 以上のようなお問合せに対応しております。